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俺は、優しく美雨の手を取る。
そして、俺の両手で包むようにして温めてやる。
頬を赤らめた美雨が、恥ずかしそうに俺から目を逸らす。
美雨は、呼吸の度に肩を小さく上下させている。
ホントに可愛い子だな、この子は……。
俺は美雨と手を繋いだまま、話を続ける。
美雨のことが、もっと知りたい。
俺は、素直にそう感じていたんだ。
時計の針が、午後10時45分を示していた。
そろそろ、この店も閉店の時間だ。
さぁ、帰るか……。
美雨と、もっと話がしたいけど……。
それは、またの機会にすれば良い。
焦る必要なんて、全然ないんだからな……。
俺は、美雨の手を優しく撫でながら言った。
「今度、またゆっくり話をしような……良い?」
そのとき美雨は、少しだけ寂しい表情を見せた。
えっ?
俺は、美雨が見せた意外な表情に困惑していた。
「……どうした、美雨……?」
俺は、美雨の表情を覗き込む。
美雨は少しの間を置いて、ゆっくりと口を開いた。
「今日は、もう帰っちゃうの……?」
そして美雨は、潤んだ瞳で俺をじっと見つめたんだ。