60


俺は、優しく美雨の手を取る。


そして、俺の両手で包むようにして温めてやる。



頬を赤らめた美雨が、恥ずかしそうに俺から目を逸らす。



美雨は、呼吸の度に肩を小さく上下させている。



ホントに可愛い子だな、この子は……。



俺は美雨と手を繋いだまま、話を続ける。



美雨のことが、もっと知りたい。


俺は、素直にそう感じていたんだ。



時計の針が、午後10時45分を示していた。


そろそろ、この店も閉店の時間だ。



さぁ、帰るか……。


美雨と、もっと話がしたいけど……。


それは、またの機会にすれば良い。



焦る必要なんて、全然ないんだからな……。



俺は、美雨の手を優しく撫でながら言った。



「今度、またゆっくり話をしような……良い?」



そのとき美雨は、少しだけ寂しい表情を見せた。



えっ?


俺は、美雨が見せた意外な表情に困惑していた。



「……どうした、美雨……?」



俺は、美雨の表情を覗き込む。



美雨は少しの間を置いて、ゆっくりと口を開いた。



「今日は、もう帰っちゃうの……?」



そして美雨は、潤んだ瞳で俺をじっと見つめたんだ。