第5章 金曜日の女「美雨(みう)」



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千尋とは、木曜日に逢う。



もちろん毎週逢えるわけではないが、俺はなるべく都合を付けて千尋に逢いに行った。



あれから、俺は千尋の部屋を訪れてはいない。


もし、そうしたとしたら俺は間違いなく千尋を抱いてしまうだろう。



俺は、怖かったのかもしれない。


もしも千尋を抱いてしまったら……俺たちの関係も変わってしまうことが。



俺は、間違いなく千尋を愛し始めていた。


それ故に、俺は臆病になっていたんだ。



千尋を失いたくない。


そして、今の千尋との関係が俺には心地良かった。



千尋とカラダの関係になれば、きっと今までと同じでは居られない。



千尋と過ごしたあの頃のことも、きっと色を失ってしまう。



そんな怖さを俺は感じていたんだ。



しかし、そのうち俺は間違いなく千尋を抱いてしまうだろう。


もしも、そうなったとしたら……。



俺は、千尋にのめり込んでしまうだろう。



冷静に、お互いの距離を保って一緒に居られる。


そんな関係が、俺には理想だった。




俺は、きっと琴音を愛し過ぎていた。



それ故に、琴音は俺から離れてしまったのだと思う。



他の女にいい顔を見せていたとしても……。


俺は、間違いなく琴音だけを愛していた。



もう俺は、千尋だけを見ていた方が良いんだよな……。



一週間女を並べるなんて……そんなバカなことはヤメようか……。



そんなことを考えていた金曜日。


俺は、美雨(みう)と出逢ってしまったんだ。