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千尋は、俯き加減に俺のカラダにすがりついている。
俺は、湧き上がる感情に素直に応えることにした。
「千尋……俺は分かったんだ……俺は、きっと千尋が好きだった」
「ううん……無理しなくていいよ先輩……」
「無理なんかしてないよ……俺は、千尋が好きだ……」
「先輩……」
俺は、千尋のカラダをギュッと抱き締める。
「あっ……」と千尋が、小さな声を漏らした。
千尋の髪を優しく撫でながら、俺は千尋の瞳をのぞき込む。
千尋の目には、大粒の涙が溢れ出ていた。
俺は親指で千尋の涙を拭き取って、もう一度千尋を強く抱き締める。
千尋がゆっくりと顔を上げる。
千尋と俺の視線が、濃厚に絡み合う。
俺は、優しく千尋の唇を奪う。
俺の背中に回した千尋の腕に、ギュッと力が入るのが分かる。
そして千尋は、俺の耳元でささやいたんだ。
「ねぇ……先輩……わたしの部屋に来ない?」
千代田線の湯島駅で下りた俺と千尋は、手をつないで歩く。
千尋の部屋は、湯島天神の近くにあった。
真新しいマンションの8階にエレベーターで上がる。
部屋に入ると、玄関で千尋が俺に抱きついて来た。
「先輩……先輩! ずっと好きだったの……ずっと……」
俺は千尋を抱きしめながら、そのとき複雑な感情を感じていたんだ。