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「先輩……どうしたの? やっぱり迷惑だったかな……」



千尋は、少し寂しげな表情で微笑む。



違うんだ、千尋……。



俺は、そんな言葉を呑み込んだ。


それは、自分の気持がちゃんと整理出来ていなかったからだ。



「いや、嬉しいよ千尋……」



俺は、ニッコリと千尋に微笑みかける。



そのとき千尋は、ぎこちない笑顔を俺に向けた。



俺と千尋は、あの頃の話に花を咲かせた。



表面上は楽しげに見えるだろうが、お互いに微妙な感情を抱えていた。



もしも初めて千尋に逢ったのなら、俺は間違いなく千尋を口説いただろう。


でも、俺は……。



「ねぇ、先輩……また逢ってくれますか?」


「あぁ、もちろん……俺も千尋に逢いたいからね……」



そのとき千尋は、少しだけ柔らかい表情を見せてくれた。



店を出た俺たちは、原宿駅へと向かって歩く。



手をつながない俺を、千尋はどう感じているのだろうか……。



俺は他の女とは違う千尋への感情に、混乱していたんだ。



俺は、どうしてしまったのだろう……。



そんなことを考えていると、突然千尋が俺の腕に抱きついて来た。



「先輩……今だけでいいから……こうさせて……」



千尋……。