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「やっぱ、肉じゃない? 好きだったよな、肉……」
「うん! そりゃ、大好きだよ!」
千尋は、そのとき本当に嬉しそうに笑った。
そんな千尋の笑顔を見て、俺も楽しくなる。
その店の入り口は、地下にあった。
シュラスコを食わせる店としては、東京で一番有名かもしれない。
「さて、空いてるかな……」
その店は、いつもは予約をしないと入れない。
ただ、この時間だとまだ可能性はある……。
良かった……大丈夫みたいだ。
うまく行く時は、上手く行く。
うまく行かないときは、上手く行かないものだ。
もし、その店に入れなかったとしたら。
俺は、きっと千尋に対する気持ちを……。
千尋へと、向けなかったかもしれない。
席に通された俺と千尋は、まずはサラダバーで野菜を皿に盛った。
そして、次から次へと回ってくる肉を少しずつカットしてもらって食べる。
「好きなだけ食べていいよ! 食べ放題だからな!」
「うん、嬉しい! お肉は美味しいし……先輩にも逢えたし!」
千尋は、また本当に嬉しそうな笑顔で俺に言う。
俺は、素直に千尋との時間を楽しんでいる。
それが、何故か不思議な気がしていた。
俺は、きっとどうでも良いような女を探していたのに……。
千尋と偶然、再会してしまうなんて……。
「ねぇ、先輩! わたし、ずっと先輩に伝えたかったことがあるんだ……」