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千尋は、俺が学生時代にやっていたカフェのバイトの後輩だった。
あれから、もう10年近くが経っている。
千尋は、当時まだ高校生だった。
確かに10年という時間が、千尋を美しく変貌させていた。
しかし、それは単に時間が経って成長しただけではない。
あの頃、千尋はかなりぽっちゃりしていた。
2つ年下の千尋は、俺に良く懐いていた。
明るくて、可愛くて、俺は千尋のことが好きだった。
しかし、それはバイトの後輩としてのことだ。
「……痩せたよな、千尋……ホント分からなかったよ……」
「うん。昔のわたしを知っている人は、みんなそう言うからね!」
千尋は、屈託のない笑顔で俺にそう言った。
「何で……ってことはないけど、良く痩せられたなぁ……」
「ちょっと病気しちゃって……それがキッカケかな……」
「そう、か……もう大丈夫なのか?」
「うん! もう何の問題もナシ!」
千尋の笑顔は、あの頃の面影を残していた。
そんな千尋の笑顔が、俺をホッとさせてくれた。
「ねぇ、先輩! これから時間ない? ちょっと飲みに行かない?」
「あぁ、もちろん! ちょっとじゃなくて、ゆっくりな!」
「あはは! 良かった!」
千尋は楽しそうにそう言って、俺の目をじっと見つめていた。
俺と千尋は、約10年ぶりに肩を並べて歩く。
あの頃も、たまにこんな風に一緒に歩いたっけ……。
いま俺の隣にいるのは、あの頃の千尋ではない。
美しく、そしてきっと優しく歳を重ねた千尋だ。
俺は、ふと触れた千尋の手を取る。
驚いたように俺を見た千尋が、恥ずかしそうに目を伏せた。