45


千尋は、俺が学生時代にやっていたカフェのバイトの後輩だった。



あれから、もう10年近くが経っている。



千尋は、当時まだ高校生だった。


確かに10年という時間が、千尋を美しく変貌させていた。



しかし、それは単に時間が経って成長しただけではない。



あの頃、千尋はかなりぽっちゃりしていた。



2つ年下の千尋は、俺に良く懐いていた。


明るくて、可愛くて、俺は千尋のことが好きだった。



しかし、それはバイトの後輩としてのことだ。



「……痩せたよな、千尋……ホント分からなかったよ……」


「うん。昔のわたしを知っている人は、みんなそう言うからね!」



千尋は、屈託のない笑顔で俺にそう言った。




「何で……ってことはないけど、良く痩せられたなぁ……」


「ちょっと病気しちゃって……それがキッカケかな……」


「そう、か……もう大丈夫なのか?」


「うん! もう何の問題もナシ!」



千尋の笑顔は、あの頃の面影を残していた。


そんな千尋の笑顔が、俺をホッとさせてくれた。



「ねぇ、先輩! これから時間ない? ちょっと飲みに行かない?」


「あぁ、もちろん! ちょっとじゃなくて、ゆっくりな!」


「あはは! 良かった!」



千尋は楽しそうにそう言って、俺の目をじっと見つめていた。



俺と千尋は、約10年ぶりに肩を並べて歩く。


あの頃も、たまにこんな風に一緒に歩いたっけ……。



いま俺の隣にいるのは、あの頃の千尋ではない。


美しく、そしてきっと優しく歳を重ねた千尋だ。



俺は、ふと触れた千尋の手を取る。



驚いたように俺を見た千尋が、恥ずかしそうに目を伏せた。