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「あれっ……もしかして、智樹くん?」


「えっ!……あっ、そう……だけど……」



俺は、千尋の言葉に驚いていた。


なぜこの子は、俺のことを知っているのだろう……。



目の前の千尋に、俺は見覚えがなかった。



以前に逢っている、ということだよな……。


でも……どうしても思い出せない……。



俺は、少しだけ焦りながら記憶の引き出しの中を検索する。



しかし、どうしても目の前の千尋にマッチするデータが見つけられないでいた。



「分からない、って顔してるよね……」



千尋が、ほっぺをふくらませながらそう言った。


そんな千尋の表情も、とても可愛いい。



「いや、ちょっと待って……ごめん! 今、頭の中を検索中だからさ……」



そう言った俺に、千尋は笑いながらこう言った。



「あはは! やっぱり分からないかぁ!」


「うーん……さっぱり、分からないや……ごめん……」


「まぁ、いいよ! 分からなくても仕方ないし!」


「ゴメンなぁ……こんな可愛い子のこと忘れることなんて有り得ないのに……」



そのとき千尋は、いたずらっぽい顔で俺に言った。



「千尋だよ! 思い出した?」


「えっ!? 千尋って、あの……千尋!?」


「そうだよ、先輩! ご無沙汰しています!」



ペコリと頭を下げた千尋が、俺の顔を懐かしそうに見つめていた。



「そう、かぁ……分からなかったよ……キレイになったな……」


「もう、先輩ったらぁ! えへへ! でも、嬉しいなぁ!」


「うん、何年ぶりだろう……懐かしいな……」