44
「あれっ……もしかして、智樹くん?」
「えっ!……あっ、そう……だけど……」
俺は、千尋の言葉に驚いていた。
なぜこの子は、俺のことを知っているのだろう……。
目の前の千尋に、俺は見覚えがなかった。
以前に逢っている、ということだよな……。
でも……どうしても思い出せない……。
俺は、少しだけ焦りながら記憶の引き出しの中を検索する。
しかし、どうしても目の前の千尋にマッチするデータが見つけられないでいた。
「分からない、って顔してるよね……」
千尋が、ほっぺをふくらませながらそう言った。
そんな千尋の表情も、とても可愛いい。
「いや、ちょっと待って……ごめん! 今、頭の中を検索中だからさ……」
そう言った俺に、千尋は笑いながらこう言った。
「あはは! やっぱり分からないかぁ!」
「うーん……さっぱり、分からないや……ごめん……」
「まぁ、いいよ! 分からなくても仕方ないし!」
「ゴメンなぁ……こんな可愛い子のこと忘れることなんて有り得ないのに……」
そのとき千尋は、いたずらっぽい顔で俺に言った。
「千尋だよ! 思い出した?」
「えっ!? 千尋って、あの……千尋!?」
「そうだよ、先輩! ご無沙汰しています!」
ペコリと頭を下げた千尋が、俺の顔を懐かしそうに見つめていた。
「そう、かぁ……分からなかったよ……キレイになったな……」
「もう、先輩ったらぁ! えへへ! でも、嬉しいなぁ!」
「うん、何年ぶりだろう……懐かしいな……」