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綾乃は、フフッと笑いながらバスルームへと消えた。



俺はマルボロにリアルシルバーのZippoで火を点ける。


マルボロの煙を肺の奥までゆっくりと吸って、フゥーと吐き出す。



薄紫の煙が、ゆっくりと上って行った。



そんな煙を見つめながら、俺は考えていた。



初めてその女を抱く時は、さすがに少しは緊張するものだ。



これから過ぎる時間と歓びを想像しながら、俺は少し落ち着かなかった。



綾乃と過ごす時間は、きっと俺にとって特別なものになるに違いない。


だけど、俺は……。



俺は、良く分からなくなっていた。


いったい、俺は……何がしたいのだろう……。



琴音を忘れるために、俺は女を求めていた。



月曜日には茜、火曜日には凛……。


そして、水曜日には綾乃……。



俺は、綾乃を抱いたとしてもきっと満足なんか出来ない。


それは、どの女でも同じなのかもしれない。



どうして俺は、琴音を忘れられないのだろう……。


どうして……。



何本目かのマルボロを消して、俺はひとつため息をつく。



そのとき、綾乃がバスルームから出てきた。



綾乃は、裸にバスタオル一枚の姿だ。


俺をじっと見つめて、艶やかに微笑む。



その笑顔に釣られるように、俺は綾乃のそばまでゆっくりと歩く。



綾乃のカラダをギュっと抱きしめる。



濡れた髪と、湿ったバスタオルの感触が俺に火を点けていた。