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俺は、そんなことを考えながら窓外に広がる東京の夜景を見つめていた。



「……どうしたの、智樹?」



綾乃が、そんな風に俺に訊く。



「……いや、ちょっと考え事をしていただけだよ……」


「ふぅーん? どんな?」


「そうだな……色々とね……」



綾乃は、じっと俺の横顔を見つめていた。



俺は、その視線を感じながらそれでもそれに気づかないフリをした。



「ねぇ……智樹は、彼女いるの?」



綾乃が、真剣な表情で俺に言う。



俺は、黒糖梅酒の水割りを口に運びながら考えていた。



何て答えようか……。



まさか、ふたりの女と付き合っているなんて答えるわけにはいかないし……。



でも、茜も凛も俺の彼女と言えるのだろうか?



ふたりとも、きっと俺を愛してくれていると思う。


だけど……。



俺は、考えを巡らせる。



茜は、きっと俺を彼氏だと思っているだろう。


でも俺は、琴音以上に茜を愛せない。



凛だって、そうだ。


凛の彼氏は、俺ではない。



俺は、ゆっくりと綾乃を見つめる。


そして、綾乃の耳元でささやくようにこう言った。



「今は……いないよ。出来れば、俺は……綾乃の彼氏になりたいけど……」



そのとき綾乃は、フフッと怪しい笑みを浮かべた。