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俺は、綾乃を探していた。



だけど次の日も、その次の日も綾乃には逢えなかった。



どうしてなんだろう……。


以前は、何度も見かけていたのに……。



綾乃に、何かが起こったのだろうか?



俺は、そんな不安な気持ちになる。



ただ偶然、同じ弁当を買って。


たまたま、同じベンチで一度だけ食事をした。



綾乃と俺は、ただのそんな関係だ。



でも、何故か俺は綾乃のことが気になってしまう。


どうしてなんだろう……。



そんなことを考えてみても、もちろん理由なんか分かるはずがない。


俺は、きっと綾乃のことが好きなのだ。



好きになるのに、理由なんてない。



あるとしたら、気持ちが動いたからだ。



誰かを好きになって、その理由を言えたとしても……。


それはきっと、ただの後付の理由でしかない。



優しいから好きになった、のではないのだ。


好きだから優しく感じる、ということだ。



俺は、綾乃に気持ちが動いてしまった。



そしてそれは茜が居ても、凛が居ても関係ない。



俺は、そんな男だからな……。



俺は、むかし琴音に言われた言葉を思い出していた。



ずっと気にしている、あの言葉を……。