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それから俺と綾乃は、楽しく話しながら食事をした。



「ねぇ、そのおかず交換しない?」


「いいよ……って、同じじゃん!」


「あはは! 楽しー!」



綾乃は、そう言って屈託なく笑う。



そんな綾乃の笑顔を見ていると、俺も楽しくなる。



先に食事を済ませた俺は、すぐには席を立たなかった。



というか、綾乃との話がとても楽しかったからだ。



弁当を食べながらケラケラ笑う綾乃が、とても可愛く見えた。



やっと弁当を食べ終えた綾乃が、右腕に巻いた時計を見る。



ふーん、ブルガリか……ダイヤがキラキラ綺麗だな……。



そんなことを考えていると、突然綾乃が立ち上がった。



「大変! 早く戻らなきゃ! じゃあ……」



そう言って綾乃は、小走りに駆け出した。



って、おいおい!



俺は、その時何となく寂しさを感じてしまっていた。



その瞬間、綾乃が立ち止まってクルッと俺の方に振り向く。



両手を後ろ手に組んで、小首を傾げながら俺に言った。



「また逢えるよね! 同じビルだしね!…… あたし、綾乃だよ!」



綾乃はブンブンと両手を振りながら、後ろ向きに駆け出す。



そんな綾乃の姿に、俺は自然と微笑んでいた。



可愛い子だな……面白いし……。



俺は綾乃の姿が見えなくなるまで、見送っていた。



そして。


見上げた青空には、真っ白い雲がプカリと浮かんでいた。