第1章 月曜日の女「茜」
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茜は、従順な女だ。
いつも俺の斜め後ろを歩く。
出しゃばらず、いつも俺の話をしっかりと聞いて俺の気持ちを優先する。
でも逆に、そんな茜が俺には物足りなかった。
自分の意見がないはずがないのに、それを全く俺には見せない。
それが茜の俺に対する愛情だということは良く分かっていた。
だけど、ただ俺の言いなりになるだけではつまらなくなる。
それが、俺の贅沢な悩みだということも良く分かっていた。
だけど……。
茜とは、月曜日に出逢った。
茜は文京区にある女子大の3年生で、月曜日は授業がないらしい。
たまたま打ち合わせが水道橋であった俺は、東京ドームの近くをフラフラ歩いていた。
次の打ち合わせまで、2時間近く空いていた。
せっかくだから、ラクーアにでも行ってみるかな……。
ラクーアと言っても、昼間っからスパに入るわけではない。
ラクーアのビルには、結構面白いショップやレストランが入っている。
時間をつぶすには、もってこいだ。
ショップを見ながら少し歩いた俺は、ハンバーガーとコーラをテイクアウトした。
ベンチに腰掛けて、ボーッと上を見る。
ビッグオーという観覧車や、サンダードルフィンというジェットコースターが見える。
そして、その先には真っ青な空が見えた。
遊園地特有の柔らかい空気が、俺を包んでいた。
日差しも暖かくて、気持ちいい。
目を閉じると、マブタを通したオレンジ色の光が見える。
フーっと息を吐いて、俺はゆっくりと背伸びをした。
そのとき。
誰かが、俺の手をサッと掴んだんだ。