「俺の名前は……智樹、だよ……」



そんな感情に戸惑いながらも、俺はニッコリと笑って右手を差し出す。


タバコを消した琴音は、ゆっくりと両手で俺の手を取ったんだ……。



俺は、間違いなく琴音に恋をしていた。


これまでの人生で一番、琴音のことが好きだったと思う。



だけど、俺は……本当に琴音を愛していたのだろうか?



琴音と別れてから、俺はずっとそのことを考え続けていた。



俺は、間違いなく琴音を愛していた。


そう信じていた。



でも本当に俺は、そうだったのだろうか?



愛するって、そもそもどういう事だ?



俺は、琴音を必要としていた。


琴音の声が、カラダが……琴音のニオイが、味が……。


そんな、全てが愛しかった。



何度カラダを重ねても、飽きたりしなかった。



逆に、もっともっと琴音を知りたくなった。



琴音が欲することは何か?が知りたかった。



琴音の悦ぶことを、俺はしてやりたかった。



琴音の反応を見ながら、俺は自分の欲望をセーブした。


そして、冷静に琴音の反応を見極める。



それが、いつの間にか俺自身の歓びとなっていた。



俺は、琴音を愛していた。


その……つもりだった。



だけど、琴音は俺の元を去って行った。



それも、呆気ないほど簡単に……。