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とはいえ、ガッつくのは俺の趣味じゃない。
俺はシャンディ・ガフのグラスを傾けながら、さりげなく琴音の様子を伺っていた。
琴音は独りで、このパーティーに来たようだ。
誰かと親しげに話すわけでもなく、退屈そうにフロアの壁につっ立っていた。
ウイスキーグラスを傾けながら、琴音はボーッと人の動きを眺めていた。
ふーん、ストレートか……面白い子だな……。
そして、琴音はピアニッシモ・ワンを取り出して紅いローズ柄のZippoで火を点けた。
へぇ……タバコ吸うんだ……。
それに女なのにZippoを使ってるなんて珍しいな……。
そのとき俺は、琴音のことを更に強烈に意識し始めていた。
そのレストランバーはフロアの一部にしか灰皿が置いていない。
タバコが吸いたくなった俺は、自然と琴音の近くに立つ。
ソファーに腰掛けた琴音が、突然俺をじっと見つめた。
そして琴音は、ゆっくりと口を開く。
「……ねぇ……Zippo好きなの?」
「んっ? あぁ……君も好きみたいだね……いいね、それ……綺麗なZippoだ」
俺は突然のことに一瞬動揺しながら、それでも冷静にゆっくりと言葉を続けた。
「独りで来たの? 友達とか一緒じゃないの?」
「そう……さっきメールが来て、来れないって……だから、もう帰ろうかと思ってたの」
「そうなんだ……ところで何飲んでるの? ウイスキーだよな?」
「うん……ちょっと飲む?」
「あぁ……じゃぁ……」
グラスを受け取った俺は、クイッと一口含む。
この赤さとシェリーの甘い香り……ドライでオレンジピールのような苦味……これは……。
「うん、やっぱりいいね……マッカランの18年……グランレゼルバ、かな?」
「そう! さすがね……あの、ね……名前……訊いてもいい?」
そのとき琴音は恥ずかしそうに、とても素敵な笑顔を見せた。
そして、俺は……その時、間違いなく恋に落ちたんだ。