85(完結)
俺は、再びエリの部屋を目指す。
俺は、カノンに伝えなければならない。
俺がカレンを本当に愛していたということを。
山手線の電車に揺られながら、俺は考えていた。
カノンは、カレンなんだ。
ふたりはひとつになりたくて、そして不幸な事故が起こったけれど……。
結局、ふたりはひとつになれた。
俺は、カレンを愛している。
そして、カノンも同様に愛しているんだ。
俺は、決心していた。
一生を賭けて、カレンを……いや、ふたりを愛し続ける。
そして俺は、必ずふたりを幸せにするんだ!
……ユウナは、知っていたんだ。
俺が、ふたりに出逢うことを。
運命は、決まっているものなのかもしれない。
しかし、それは自分自身の選択によって枝分かれするに違いない。
もしも俺が、今までのように真剣に女を愛そうとしなかったとしたら。
きっと俺は、ずっと女を不幸にしてしまうだろう。
そしてそれは、俺自身が不幸だということなのだから……。
もう、愛する女を失いたくはない。
「……重なりは、ひとつになる……繋ぎ止める、ために……」
ユウナが残した、その言葉の意味を俺は理解していた。
カレンとカノンはひとつになって、俺の心を繋ぎ止めた。
そして……それは、ユウナの愛を繋ぎ止めることでもあるのだから。
ユウナが望んだ俺の未来を、俺は自分自身で選択する。
そういうことだ……。
新宿駅で小田急線に乗り換えた俺は、エリの部屋を目指す。
そこには、カノンとカレンがいる。
電車の窓から流れる景色を見ながら、俺は幸せな気分だった。
そう、本当に……。
『Fastener1990(ファスナー1990)』
了
CopyRight by Hiroto Izumi 2009.12.11