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「ねぇ、シュン……あたしのこと覚えてる?」


「えっ……!?」



背中から、エリちゃんの体温が伝わっていた。


温かくて、柔らかい……。



いや、そうじゃなくて。


エリちゃんは、俺の背中にぴったりと密着していた。



顔は、見えない。


見えるのは、俺の胸の前に回したエリちゃんの両手だけだ。



俺は、必死でエリちゃんの声を思い出していた。


脳の中のメモリーに、今聞いたエリちゃんの声を照合する。



俺は以前に、エリちゃんと逢っているのか?


思いだせない……。



「忘れちゃった? あたしの声、忘れちゃったの?」



エリちゃんは、いたずらっぽくそう言った。


俺は、目を閉じながらエリちゃんの声を聴いていた。



確かに……聞いたことがある声のような……。


誰かの声に良く似ている気がする。



でも、誰だ……。


何かが、微妙に違うような……。



でも、確かに似ている!?


いや、まさか……!?



俺は、ハッとして目を開ける。


そのとき、目の前に腕時計が見えた。



エリちゃんの左手に着けられた時計が、確かに俺の記憶を呼び覚ました。


それは、見覚えがある時計だった。



だって、それは……。


俺がユウナにプレゼントした腕時計だったから……。