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俺は、ただボーっとユウナを見送っていた。
それでも……今日こそ声を掛けよう……もっとユウナと話がしたい……。
そんな思いが、俺を突き動かそうとしていた。
そのとき、ユウナが立ち止まってゆっくりと俺のほうを振り返った。
そして、そのときユウナが微笑みながら俺に言ったんだ。
「先輩! 一緒に帰ろうよっ!」って……。
ユウナのアパートは、偶然にも俺のアパートと同じ方向にあった。
自転車で大学に通っているのだから、学校から近い場所に住んでいるのは分かっていた。
でも、それが俺と同じ方向の……しかも同じ町内だったなんて……。
俺は、そんな偶然に感謝していた。
そのころの俺は、まさに貧乏学生だった。
アルバイトをする時間もほとんどなく、大学の課題と研究活動で時間は費やされていた。
風呂もないトイレ共同のアパートは、家賃が2万3千円だった。
実家からの仕送りは月に10万円。
少ない額ではないが、なんやかんやでいつもお金が足りなかった。
研究室の飲み会では、先輩が後輩の分まで出すのが当たり前だったし……。
「ねぇ、先輩! ちょっとお願いがあるんですけど……」
ユウナが上目遣いで俺の目を見つめた。
俺はガラにもなくどきどきしていた。
「……うん? 何? っていうか、シュンで良いってば!」
そんなことを言いながら俺は、ユウナの次の言葉を待っていた。
ユウナが俺に声を掛けたのは……何か頼みごとでもあるのだろう……。
「あたし、先輩が好きです!」なんて、ウマイ話はないだろうしな……。
俺は苦笑いしながら、じっとユウナを見つめた。