「カノン、お願いだ! お願いだから……電話してくれないか?」


「……そんなの分かんないよ……シュンのこと、信じられない……」



俺は、カノンの悲しそうな表情に心が痛んでいた。


そして、そのとき正直に俺はカノンに気持ちを伝えていた。



「俺は……君のことが好きになってしまったんだ! 嘘じゃない!」


「嘘っ! 誰にでもそんなこと言ってるんでしょ? 信じられないよ!」



カノン……。



部屋を出て行こうとするカノンを、俺は後ろから抱き締める。


カノンは俺の手を振りほどいて、こう言った。



「……じゃあね、シュン……」


「カノン……」



そのとき俺は、今までに感じたことがない感情を感じていた。



この女を離したくない……。


しかし、それ故に俺はカノンを強引に引き止められないでいた。



目の前で、ゆっくりとドアは閉じられた。


俺は、ただ呆然と立ち尽くす。



俺は自分の中に生まれた感情に、そのとき間違いなく戸惑っていた。



俺は、女を愛さない……。


そう決めていたはずなのに……。



俺は、マルボロにZippoで火を着ける。


台所の換気扇を回す。


換気扇に吸い込まれていく薄紫色の煙を、俺はただじっと見続けていた。



それが、俺とカノンの運命の出逢いだった。