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亮二は、がっくりとアスファルトに膝をつく。



そして、そのまま道路にゆっくりと崩れ落ちた。



消え行く意識の中で、亮二は感じていた。



……思い出がスローモーションのように目の前を流れて行く。



春子と出逢った、晴海のバス停……。



春子が差し出した水色の傘の色……。



「亮ちゃん、あのね……わたし……赤ちゃんが出来たかもしれない……」



そう言った、春子の思い詰めた顔……。



最後に、春子を見たあのアパートの玄関で。


春子は、悲しそうな顔で俺を見つめていた……。



夏子と出逢った、あの雨の日。



夏子が差し出した、赤い傘の色……。



夏子が残したROLEXの金色……。



再び逢えた夏子が見せた、本当に嬉しそうな笑顔……。



「あなたは、お父さんなの? あたしの……お父さんなの?」



そう言った、夏子の思い詰めた顔……。



「これからは、ずっと一緒に居よう……」



そう言った俺に、夏子は言った。



「うん……亮ちゃん!約束だょ!」



そのときの、夏子の本当に嬉しそうな顔……。