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そんなメールを送った亮二は、ケータイの電源を切る。
ケータイをベッドサイドのテーブルの上に置いて、亮二はベッドにゆっくりと横になった。
これで良いんだ。
俺を忘れてくれたほうが、きっと……。
亮二は頭の奥に、重い痛みを感じていた。
そして亮二は、ゆっくりと意識を失って行く。
気が付くと、次の朝になっていた。
味気ない朝食を取った亮二は、またフラフラと病院の中庭に向かって歩き出す。
昨日見上げた桜の花は、相変わらず華やかに咲き誇っていた。
亮二は、そんな満開の桜を見上げながら考えていた。
この花を、俺はあと何度見ることが出来るのだろう……。
突然の春風が、サァーっと砂埃を舞い上げる。
桜の枝が激しくしなって、花びらが一瞬にして辺りを桜色に染めた。
思いのほか強い風が止んで、辺りを一瞬の静寂が包む。
亮二は、ひとつため息をついて思い出したようにケータイを開く。
立ち上がったケータイメールの受信ボックスには、少し前に夏子からのメールが届いていた。
件 : 亮ちゃん、逢いたいよ……
そんなタイトルのメールを、亮二は開けないでいた。