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「ねぇ、亮ちゃん……亮ちゃんは、あたしのこと迷惑なのかな……」



夏子が、突然そう言った。



亮二は、動揺しながらも冷静を装って言った。



「バカなこと言うんじゃないよ、夏子……迷惑なわけないだろ?」


「……でも、何だか亮ちゃん、迷惑そうだと思って……」



夏子は、悲しげな目でじっと亮二を見つめていた。



「いや、違うよ……正直に言うとね……俺は、夏子のことが本当に大切だと思ってる……」



夏子は、そのとき本当に嬉しそうな笑顔を見せた。



そんな夏子の笑顔を見ながら、亮二は夏子に掛ける言葉を選んでいた。



今、俺の気持ちをちゃんと夏子に伝えなければ……。


きっと、俺は後悔するだろう。


きっと、春子のときと同じように……。



亮二は、ひとつ大きく息を吸って夏子に言った。



「夏子……俺は、君を愛している……それは、間違いのない気持ちだ。だけど……」


「だけど? だけど何、亮ちゃん!」


「だけど、夏子には俺じゃなくてもっとふさわしい人がいると思う。俺みたいなオジさんじゃなくて……」



亮二の言葉をじっと聞いていた夏子が、突然言った。



「何言ってんのよ、亮ちゃん! そんなの関係ない! ……もしもね、亮ちゃんが迷惑なら仕方ないと思ってた。だけど……違うんでしょ?」


「あ、ぁ……違うよ……」


「じゃぁ、いいじゃない! あたしが良いんだから! 亮ちゃんじゃなきゃ、イヤなんだから!」



真剣な夏子の言葉に、亮二は困ったような嬉しいような不思議な気持ちを感じていた。