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「帰ろう、夏子……俺たちの街に」
「……うん、亮ちゃん。帰ろう!」
夏子は、そう言ってニッコリと笑った。
とても、魅力的な笑顔で。
行田市役所を出た亮二は、今度は国道17号線に出てゆっくりと東京を目指す。
少しだけ空けたカムリの窓から、春の風が車内に流れ込んでいた。
サラサラのストレートの髪をなびかせながら、夏子はボーっと流れる景色を見ていた。
横目でそんな夏子を見た亮二は、感じていた。
夏子が、愛しい。
だけど俺は、夏子を愛しても良いのだろうか?
いや、夏子を愛する気持ちはきっと変わらないだろう。
だけど……。
亮二は、思っていた。
俺は夏子と愛し合っても良いのだろうか、と……。
春子は、俺に夏子を頼むと言った。
しかし、俺は夏子を幸せにすることが出来るのだろうか?
夏子は関係ないと言ったが、やはり年の差も気になる。
亮二は今、44歳だった。
いま18歳の夏子とは、26歳の年の差がある。
そして、何よりも亮二は自信がなかったのだ。
春子を幸せに出来なかった俺が、夏子を幸せに出来るのだろうか?