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冬子の夫、つまり夏子の父親の名前が……!
変わっていた……。
そこに書かれていたのは、俺の名前ではなかった。
また、何かが変わってしまった……。
亮二はホッとした気持ちと共に、なんとも言えない不安を感じていた。
この結果は……俺が望んだからか?
いや、それは違う。
亮二は、そう思いたかった。
亮二は、もういちど戸籍謄本を確認する。
1990年、冬子と夫は同じ日に死亡していた。
やはり、何かの事故だったのだろうか……?
そして独り残された夏子は、その年の秋に春子の養子になっていた。
俺がいた現実と、たぶん同じだった。
春子は最後に、元の時間に俺を連れ戻してくれたのだろうか?
そして。
春子は、最後に何を言おうとしたのだろう?
「そして、わたしは……」
春子の、そんな言葉が亮二の耳の奥に確かに残っていた。
亮二は、戸籍謄本をカムリのグローブケースにしまう。
そして、夏子に優しく声を掛けた。