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夏子の声が聞える……。
そして亮二は、ゆっくりと目を開く。
そこは行田市役所の駐車場、亮二のカムリの中だった。
場所は移動していない、か……。
亮二は、反射的に腕時計を確認する。
2009年3月30日、月曜日……。
午前11時14分、か……。
時間も移動していないようだ……。
俺は、夢を見ていたのだろうか?
でも、どこからが夢でどこからが現実なんだ?
……いや、違う。
これは間違いなく、今の俺の現実なんだよな……。
「亮ちゃん、大丈夫!? 平気なの、亮ちゃん!?」
夏子の声に、亮二はハッとする。
夏子は、その大きな瞳に涙を溜めて亮二を心配そうに見つめていた。
「うん、大丈夫……ちょっと眠っていただけさ……」
そう言って夏子に笑い掛けた亮二は、自分の左手に何かを握り締めていることに気づく。
それは、さっき取った夏子の戸籍謄本だった。
亮二は一瞬躊躇して、それでもゆっくりと戸籍謄本を確認する。
えっ?
そんなバカな……!