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それでも亮二は、今日起こった信じられない出来事を冷静に受け止め始めていた。



春子にまた逢えたこと、そして夏子とまた逢えたこと。



俺は、願えば叶えることが出来るのか?



しかし、そのために俺は時間を失ってしまった。



冬から春へと飛び越えた時間は、どこに行ってしまったのだろう?



そして、今の現実は……?



この世界では、俺は夏子の実の父親らしい。



しかし、夏子に対する俺の気持ちは変わっていない。



それは娘に対する愛情ではなく、ひとりの女として愛する気持ちだ。



「亮ちゃん……あたし、やっぱり戸籍謄本見れないよ……事実を知るのが怖いの……」



夏子は亮二の反応から、何かを感じていたのだ。



「……うん。そうだな……」



そう言った亮二は、もう一度戸籍謄本に目を落とす。



そうか、やっぱり……。



1990年に、春子は養子縁組をしている。


亡くなった姉の子である夏子を、春子が引き取ったのだ。



そして、夏子の実親が記載されているということは普通養子縁組だ。



夏子の言った通り、春子は一度も結婚していない……。


未婚者でも養親になれるんだよな……。


しかし、確か家庭裁判所の許可を受けなければならないはずだ。



全てを抱えた春子は、独りですべてを受け止めたのか……。



そんな春子の気持ちを思いながら亮二は、また罪の意識を感じていた。