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俺は……本当に夏子の父親なのか?
亮二は、もういちど戸籍謄本を確認する。
そこには、間違いなく亮二の名前が書かれていた。
「どうしたの? 亮ちゃん……顔色、悪いよ……」
夏子が心配そうに亮二を見ていた。
「……いや、大丈夫。ちょっと疲れただけだよ……」
亮二は動揺を隠して、夏子に言った。
……このことを夏子に知らせたくない!
亮二は、正直そんな気持ちだった。
だいたい、亮二には記憶がないのだ。
山岸冬子と、俺は結婚していたと言うのか?
そんなはずはない。
だって俺は、冬子という女に逢ったこともないのだから……。
亮二は冷静に考えてみた。
いま俺がいるこの世界は、これが現実ということだ。
俺には記憶はなくても、この世界にいた俺は冬子という女と結婚した。
そして、夏子が生まれた……。
この世界にいたはずの俺は、どうしたのだろう?
俺がこの世界に来てしまったから、元の俺がいた世界に行ってしまったのか?
亮二は混乱していた。
いったい俺は、どうしたら……。