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亮二と夏子は、東池袋から首都高速に乗った。
池袋線、中央環状線、川口線を経由して東北道に入る。
加須インターチェンジで東北道を降りるまでの、約一時間。
亮二と夏子は、お互いほとんど口も開かないまま過ごした。
それは、これからのことをお互いに考えていたからに違いない。
亮二は、夏子にこれから何をするのかをちゃんと説明していなかった。
しかし、それでも夏子は分かっていたのだ。
夏子が避けていた過去を、亮二は知りたかった。
そうすることで、春子とのことに決着を着ける……。
亮二は、そのときそう思っていた。
国道125号線をしばらく走ると、左手に行田市役所の本庁舎が見えてきた。
夏子は、ひとつため息をついて亮二に言った。
「亮ちゃん……あたし保険証と社員証……あと印鑑も持ってるから……社員証は写真入りだし大丈夫だと思う……」
「……用意していたのか、夏子……」
「うん。いつかこんな日が来るんじゃないかって、必要なものは調べていたから……」
駐車場にカムリを止めた亮二は、促すように夏子に声を掛けた。
「行こう、夏子……二人の未来のために……」
「未来、か……そうだよね、亮ちゃん! 行こう!」
歩き出した亮二の腕を、夏子がつかむ。
まるで、初めて逢ったあの渋谷のときのように……。