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亮二は、確かに願っていた。
夏子に、もう一度逢いたい。
ゆっくりと目を開けると、目の前にはアスファルトが見えた。
どっちが夢で、どっちが現実なんだろう?
春子を、もう一度取り戻した現実。
それは、夏子を永遠に失ってしまう現実。
夏子を、取り戻す現実。
それは、春子をもう一度失ってしまう現実。
亮二は葛藤しながらも、自分の心に正直になっていた。
俺は、夏子に逢いたい……。
目を上げた亮二は、目の前に薄いブラウンのアパートを見た。
戻った?
亮二は、自分の服を確認する。
えっ?
時計は、見覚えのあるCASIOの電波時計のダイバーだった。
しかし、服はモンクレールのダウンジャケットではなかった。
亮二は、なぜか春物のシャツを着ていた。
確かに夏……いや、1月だったはずなのに……。
辺りを見回すと、桜の花が満開だった。
俺は、今度はいつに来てしまったんだ?