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亮二は、アパートの前でただ呆然と立ち尽くしていた。



そして、ふと気づくと亮二の目からは涙が流れていた。



その涙は、また逢えた春子への想いからか?



それとも、失ってしまった夏子への想いからか?



亮二は、自分自身の気持ちに動揺していた。



俺は……。


夏子を失いたくなんてない!



これは、きっと夢なんだ……。



俺は、春子にずっと逢いたかった。



でも……。


本当は19年という長い時間を掛けて、俺は春子を忘れようと努力していたはずだ。



そして、夏子から春子が死んだと聞いたことで。


俺は悲しみとともに、本当の意味で春子を忘れられると感じていたんだ。



亮二は今、そんな複雑な気持ちに押しつぶされそうだった。



胸が苦しい……めまいがする……。



亮二は頭を抱えて、その場にうずくまる。



目を閉じた亮二は、無意識のうちに祈っていた。



夏子に、もう一度逢いたい……。



夏子……夏子!