55
亮二は、焦りながら春子に訊いた。
「春子……あのさ……夏子っていう子知ってるよな?……お姉さんの子供だと思うんだけど……」
春子は、キョトンとした顔で亮二に言った。
「うん? わたし、お姉ちゃんなんていないよ! 親戚にも夏子って子はいないし!」
亮二は春子の言葉に、激しく動揺していた。
ちょっと、待て!
何かが、おかしい……。
亮二は、自分を落ち着かせようと目を閉じて考え始めた。
ひとつひとつ、疑問を整理するために。
確かに、俺には2009年までの記憶がある。
なぜだか分からないが、俺は19年前の1990年に来てしまった。
それ自体、信じられない話だが……。
でも、どうして俺は戻って来てしまったのだろう?
……それは、春子との人生をやり直したいと願ったからに違いない。
きっと、そうだと思う。
夏子のときも、そうだった。
夏子に逢いたい……。
あの日の渋谷で、そう願った俺は目の前に夏子を見つけた。
願えば、思いは叶うのだろうか?
信じることで、夢は叶うのだろうか?
そして俺は、もう一度春子を手に入れることが出来たんだ。
でも、その代わりに……夏子は?