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亮二は、焦りながら春子に訊いた。



「春子……あのさ……夏子っていう子知ってるよな?……お姉さんの子供だと思うんだけど……」



春子は、キョトンとした顔で亮二に言った。



「うん? わたし、お姉ちゃんなんていないよ! 親戚にも夏子って子はいないし!」



亮二は春子の言葉に、激しく動揺していた。



ちょっと、待て!


何かが、おかしい……。



亮二は、自分を落ち着かせようと目を閉じて考え始めた。


ひとつひとつ、疑問を整理するために。



確かに、俺には2009年までの記憶がある。


なぜだか分からないが、俺は19年前の1990年に来てしまった。



それ自体、信じられない話だが……。



でも、どうして俺は戻って来てしまったのだろう?



……それは、春子との人生をやり直したいと願ったからに違いない。


きっと、そうだと思う。



夏子のときも、そうだった。



夏子に逢いたい……。


あの日の渋谷で、そう願った俺は目の前に夏子を見つけた。



願えば、思いは叶うのだろうか?



信じることで、夢は叶うのだろうか?



そして俺は、もう一度春子を手に入れることが出来たんだ。



でも、その代わりに……夏子は?