47
亮二は、その住所を覚えていた。
それは、間違いなく春子の住んでいたアパートの住所だった。
「夏子、もしかしたら……部屋番号は103号室じゃないよな?」
「どうして知ってるの? そうだよ! もしかして、それって……」
「……あぁ、君のママが住んでいた部屋だよ……」
「うそ……そんな偶然があるなんて凄い! そう思わない? 亮ちゃん!」
夏子の興奮した声を聞きながら、亮二はそんな不思議な偶然に動揺していた。
……いや、これは偶然ではないのかもしれない。
夏子は、本当は知っていたんじゃないだろうか?
いや、でも……。
夏子の様子からすると、そんな風には思えないし……。
亮二は、そんな複雑な思いで夏子の楽しそうな声を聞いていた。
次の朝9時、亮二は東池袋にいた。
10年落ちのトヨタ・カムリを夏子が住むアパートの近くのパーキングに止めた。
あの頃とは、かなり街並みが変わっていた。
当たり前だよな……あれから20年近くも経っているんだから……。
しかし、建物が変わっていたとしても道路はほとんど変わっていない。
亮二は、昔の記憶を辿りながら夏子の住むアパートを目指す。
夏子は、なぜ春子の住んでいた部屋にいるんだろう?
これは、運命なのか?
神のいたずらなのか?
それとも……。