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亮二は、ふと気づいたように井の頭線に向かってトボトボと歩き出す。



亮二の頭の中は、さっき別れた夏子のことでいっぱいだった。



夏子のことを考えると、亮二の胸は痛んだ。



自分のせいで、夏子を不幸にしてしまった……。



そんな思いが、亮二の胸を締め付けていた。




亮二は春子が消えて以来、仕事への情熱を失ってしまった。


勤めていた広告代理店を辞めることはなかったが、今まで必死でやっていた仕事への情熱はあの日以来消えうせてしまったのだ。



今では第一線から外れて、ただ日々をやり過ごす。


そんな毎日を亮二は、ずっと続けていた。




井の頭線に乗った亮二は下北沢で乗り換えて小田急線で祖師ヶ谷大蔵に戻る。


駅から10分ほど歩いた古いマンションで亮二は暮らしていた。



独りきりの、その部屋に戻った亮二は夏子のことを考え続けていた。



布張りのソファーに腰を下ろして、亮二はボーっと時間を過ごす。



どのくらいの時間が経ったのだろうか?


夏子のことを、ただ考え続けていた亮二は、ひとつの決心を固めていた。



そして亮二はケータイをダウンジャケットのポケットから取り出して、会社の上司に電話を掛けた。



亮二は明日の月曜日、休みを取った。



俺は、どうしても確かめなければならない……。



亮二は、そんな強い決意を静かに胸に秘めていた。