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「そうだよ……君のママは、君と同じ東池袋のアパートに住んでいたんだ……」
そのとき亮二は、思い出していた。
あのアパートで、春子と最後に逢ったときのことを。
しかし。
ただ、そんな思い出を悲しんでいても仕方がない……。
そのとき亮二は、そんな風に考えることが出来ていた。
いま、俺の目の前には夏子がいる。
俺は、とにかく夏子を幸せにしてやらなければならないんだ……。
亮二は、そんな決心を固めていた。
そのときは、確かに……。
亮二は夏子の大きな瞳を見つめて、ゆっくりと言った。
「夏子……これからは、俺に頼ってくれないか……俺は、君の……パパの代わりが出来ないだろうか?」
夏子は、じっと亮二の目を見つめ返していた。
しばらくの沈黙のあと、夏子がゆっくりと口を開く。
「そんなの……イヤだよ、亮ちゃん! だって、亮ちゃんは……あたしのパパじゃないもの!」
夏子は、真剣なまなざしで亮二を真っ直ぐに見つめていた。
「あたしは、ね……亮ちゃんを愛してるの……ママの娘だからじゃないよ……写真を見たときから……ううん、あの日亮ちゃんを見つけたときから、きっと……」
亮二は夏子の真剣な言葉を、今度はしっかりと受け止めようとしていた。
夏子……俺だって本当は、きっと……。