39


亮二は、また後悔の念に苛まれていた。



あの時、俺は指輪を用意して春子に逢いに行った。



自分なりには覚悟が出来ていたはずだった。



でも……。



本当は、俺の覚悟は本物ではなかったのかもしれない。



あの時、春子は俺のことを信じることが出来なかったんだ。



でも、それは春子のせいなんかじゃない。



春子の信頼を勝ち得ることが出来なかった、俺のせいなんだ……。



亮二は、なおも自分を責め続ける。



もしも、あの時俺が春子を信じさせることが出来ていたら。


そう、信頼させることが出来ていたとしたら。



いま目の前にいる夏子も、苦しませることはなかったのかもしれない。



亮二は、いま一番気になっていることを夏子に訊いた。



「君は……ママが亡くなってから、どうやって生きて来たんだ? もしかして……」



夏子は、一瞬寂しそうな顔をして。


しかし、そのあとキッパリと亮二に言った。



「あたしは、独りで生きて来ました……だって、他に頼れるひとなんていなかった……」



やっぱり……そう、か……。



そのとき亮二は、激しい痛みを心に感じていた。



それは、もしかしたら。


春子が亡くなったと聞いた時よりも、激しく……。