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亮二は、また後悔の念に苛まれていた。
あの時、俺は指輪を用意して春子に逢いに行った。
自分なりには覚悟が出来ていたはずだった。
でも……。
本当は、俺の覚悟は本物ではなかったのかもしれない。
あの時、春子は俺のことを信じることが出来なかったんだ。
でも、それは春子のせいなんかじゃない。
春子の信頼を勝ち得ることが出来なかった、俺のせいなんだ……。
亮二は、なおも自分を責め続ける。
もしも、あの時俺が春子を信じさせることが出来ていたら。
そう、信頼させることが出来ていたとしたら。
いま目の前にいる夏子も、苦しませることはなかったのかもしれない。
亮二は、いま一番気になっていることを夏子に訊いた。
「君は……ママが亡くなってから、どうやって生きて来たんだ? もしかして……」
夏子は、一瞬寂しそうな顔をして。
しかし、そのあとキッパリと亮二に言った。
「あたしは、独りで生きて来ました……だって、他に頼れるひとなんていなかった……」
やっぱり……そう、か……。
そのとき亮二は、激しい痛みを心に感じていた。
それは、もしかしたら。
春子が亡くなったと聞いた時よりも、激しく……。