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そんなことを考えながら亮二は、夏子をじっと見つめ続けた。
亮二のそんな視線に気づいた夏子は、恥ずかしそうに微笑んだ。
悲しみを押し隠した、そんな夏子を。
亮二は、確かに愛しいと感じていた。
しかし、それでも亮二は夏子に訊き続けた。
夏子に悲しみを思い出させようとも。
亮二と夏子、ふたりが抱えていることに結論を出すために。
「夏子、君は……子供の頃、どこに住んでいたんだ?」
「うん……行田だよ、埼玉の……」
行田は、東京からほんの50キロほどの距離にある。
春子と夏子は、そんなに近くにいたのに……。
亮二は、夏子の言葉に動揺していた。
そんなに近くにいたのに、俺は……。
亮二は、それでも冷静なフリをして夏子に訊き続けた。
「そこは、春子の実家だったのか?」
「そう……最初は、大きなお家にいたみたい……」
「最初は、と言うと?」
「あたしが覚えているのは、小さなアパートだったから……」
「ご家族はいなかったのか? 誰も?」
「そうだよ……ママとあたしの二人だったよ」
亮二は、夏子の言葉を冷静に考えていた。
そうか……だから春子は……!