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そんな亮二の姿を夏子は、涙を拭きながらじっと見つめていた。
そして夏子は、何かを決意したかのようにゆっくりと口を開いた。
「亮ちゃん、あのね……あたしは、ママの娘だよ。だけど……」
「だけど……何なんだよ、夏子?」
亮二は無意識のうちに、少しキツイ声でそう言ってしまった。
「ごめん……すまない、夏子……」
亮二は、また自分の小ささを感じながら夏子にそう詫びた。
きっと俺は、昔から変わっちゃいないんだ……。
だから春子は、俺から離れて行ったんだ……きっと……。
そして夏子は、しっかりとした口調でこう言った。
「だけど……あたしは、ママが産んだ子じゃないと思うの……」
夏子の言葉を、亮二は自分でも不思議なほど冷静に聞いていた。
でも……きっとそうなのかもしれない、な……。
あの時きっと、夏子は妊娠なんてしてなかった。
でも、夏子はいったい……。
「あたしはパパの顔を知らない。物心ついたときには、ママとふたりきりだったから……」
「そうか……春子は、ひとりで君を育てたんだな?」
「そう……ママは、あたしを大切に育ててくれたよ……愛してくれたよ……」
あのとき、春子に何が起こったのだろう?
俺は、どうして気づけなかったのだろう……。
亮二は、また自分の罪を深く感じていた。