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「ママが亡くなる少し前に、あなたの写真を見つけたの。ママが大切に持っていた写真を……」
えっ?
亮二は、夏子の言葉に驚いていた。
春子が、俺の写真をずっと……?
「その写真の裏には、ブルーブラックの万年筆で文字が書いてあった……」
「……なんて書いてあったんだ……夏子……」
亮二は夏子の言葉を待ちながら、じっと夏子の顔を見つめていた。
少し寂しそうにうつむく夏子の姿に、あの日の春子の姿を重ねながら。
「佐久間亮二…………わたしの、一番大切なひと。……わたしの、一番愛したひと。ずっとずっと、永遠に…………ごめんね、亮ちゃん……って」
夏子の言葉を聞いた亮二は、両方の目頭が熱くなるのを感じていた。
そして、いつの間にか亮二の頬を涙が流れていた。
「……良かった……あなたの涙を見ることが出来て……あなたも……ママを愛していたんだよね?」
夏子は涙を流しながら、それでも懸命に微笑もうとしていた。
「……俺は……春子を幸せにすることが出来なかった。俺には……春子を愛していたなんて言う資格は無いよ………」
亮二は流れる涙を拭こうともせず、テーブルの上にあるコップの水を見つめていた。
コップの水は、丸い輪を描きながらゆっくりと揺れていた。
ブルブルと震える亮二の体の振動が、亮二の膝を伝わってテープルを小刻みに揺らしていたのだ。
「でも、俺は……ずっと春子を愛していたんだ……。ずっと……」