25


「……逢ったときに感じたの……この人は、あたしのお父さんじゃないって……」



夏子は、しっかりと亮二を見据えて言った。



「あなたは、あたしの運命の人だって……どうしてだかは分からない。だけど、そう感じてしまったの……」



夏子のそんな言葉に、亮二は春子とのことを思い返していた。



俺は、春子を追わなかった。


探す気になれば、本当はいくらでも方法はあったはずなのに。



俺はあのとき、春子という存在がいなくなったことによってホッとしたんだ。


だって、様々なやっかいが一瞬にして消えたのだから。



春子は、俺に嘘をついた。



子供なんか、いなかった。



そして春子は、あのとき俺を愛することをやめたのだ。



だから俺は、春子を捨てたんだ。



だから俺は、春子を捜さなかったんだ……。



亮二は、そう思いたかった。



そう思い込むことで、自分自身の心の痛みを少しでも軽くするために。



そして、同時に。


自分の罪を決して忘れないように。



本当に愛していた春子を失った悲しみをごまかすために。



「ママは、きっとあなたを愛してた。ずっと……だって……」



夏子は、涙を流しながら亮二を見つめ続けていた。