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「……逢ったときに感じたの……この人は、あたしのお父さんじゃないって……」
夏子は、しっかりと亮二を見据えて言った。
「あなたは、あたしの運命の人だって……どうしてだかは分からない。だけど、そう感じてしまったの……」
夏子のそんな言葉に、亮二は春子とのことを思い返していた。
俺は、春子を追わなかった。
探す気になれば、本当はいくらでも方法はあったはずなのに。
俺はあのとき、春子という存在がいなくなったことによってホッとしたんだ。
だって、様々なやっかいが一瞬にして消えたのだから。
春子は、俺に嘘をついた。
子供なんか、いなかった。
そして春子は、あのとき俺を愛することをやめたのだ。
だから俺は、春子を捨てたんだ。
だから俺は、春子を捜さなかったんだ……。
亮二は、そう思いたかった。
そう思い込むことで、自分自身の心の痛みを少しでも軽くするために。
そして、同時に。
自分の罪を決して忘れないように。
本当に愛していた春子を失った悲しみをごまかすために。
「ママは、きっとあなたを愛してた。ずっと……だって……」
夏子は、涙を流しながら亮二を見つめ続けていた。