20
「俺を試したっていうのか、春子……本当に……」
春子は、キッとした表情で亮二を見た。
「そう……試したの……」
亮二は、春子に言葉にカッとしてしまった。
「あぁ、分かったよ……良かった、子供がいなくて……」
そのとき春子は、本当に悲しそうな顔で亮二をじっと見つめた。
しまった……。
そう思っても、もう遅かった。
亮二はもう、後に引けなくなっていた。
「分かった。もういい……じゃあ、な……春子……」
亮二は、きびすを返して春子の部屋の前を離れた。
そのとき、亮二は振り返ることが出来なかった。
振り返ったときに、もしもそのドアが閉じられていたら……。
そう思うと、亮二は怖かった。
深夜の東池袋の町を、亮二はアテもなく歩いた。
春子とは、少し時間を置いたほうが良いのかもしれない……。
亮二は、そんな風に考えていた。
しかし……。
春子は、なぜあんな嘘をついたのだろうか?
あんな嘘をつくヤツじゃないのに……。