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忙しい時間を縫って、亮二は春子に逢いに行く。
確かに、最初はそうだった。
地方から上京して、大学に通っていた春子は。
東池袋のアパートに独り暮らしをしていた。
深夜、仕事を終えた亮二はタクシーで春子のアパートへと良く向かった。
どんな遅い時間でも。
連絡を入れると、春子は起きて亮二を待っていた。
その頃の亮二は、そんな春子のことを当たり前のように思っていた。
バブル絶頂期のその頃は。
今とは違って、金が回る時代だった。
亮二は仕事の面白さと、忙しさに追われていた。
家に帰る暇も惜しんで仕事を覚え、そして遊んだ。
そして、その合間を縫って亮二は春子に逢いに行った。
その頃の亮二は、まだまだ若かった。
亮二は、自分が春子に逢いに行くことだけで。
春子は自分の全てを受け入れてくれると思っていた。
それは、若さゆえの傲慢だったのかもしれない。
逢ったときの春子の笑顔が。
最初とは少しずつ違って来ていたことにも気づかないで……。
そんな、ある日。
春子が、今までに見せたことも無いような真剣な表情で。
亮二に、こう言った。