歩きながら少しだけ冷静さを取り戻した亮二は、少女に疑問をぶつけた。



「何で……こんなことするの?」



それでも、あまり冷静とは言えない亮二のそんな質問に少女は訝(いぶか)しげな表情を見せた。



そして少しの沈黙のあと、少女はゆっくりとその小さな口を開いた。



「だって……これは運命なんだから……」


「……運命、だって?……なんだ、そりゃ?」


「……これは運命なの。絶対に、そうなんだから……」



そう言った少女の真剣な表情に、亮二は不思議と諦めにも似た感情を感じていた。



そして何だかよく分からないけど、亮二は少女に対して少しだけ安心感を感じていたのだ。



それは、予感のようなものだったのかもしれない。



亮二は、そのとき信じられると感じていた。


今、そばに居て右腕にぶら下がっている少女のことを。



こんな不条理な出逢いで安心感を感じるのも、変な話だとは分かっていたが。


それでも亮二は、その時そう感じていた。



「君……名前は?」


「なつこ。夏に生まれたから、夏子……」



それ以外には言葉も交わさないまま、亮二と少女はJR渋谷駅の改札まで歩いて来た。



「じゃぁ、またねっ!」



そう言っって夏子は、満面の笑みを浮かべながらハチ公前の人混みに消えて行った。