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夏子との出逢いは、ほんの偶然から始まった。
新しい年が明けて間もない、ある日のことだった。
折り畳み傘を持ち歩くのが嫌いな亮二は、突然の雨に途方に暮れていた。
カフェに入るときには、あんなに青空だったのに……。
なんとなくカフェを出てしまった亮二は、ブルッと身震いしながら恨めしそうに薄暗い雨空を見上げた。
そのとき突然掛けられた声に、亮二はハッとした。
「渋谷駅まで一緒にいかがですか?」
鈴を転がすような声とは、こんな声を言うのだろうか。
聞いているだけで心がウキウキするような、そんな声……。
亮二は、差し出された可愛い小さな赤い傘を見た。
今でも亮二は、そのときのことをふと思い出すことがある。
差し出された傘の赤さと、夏子の屈託のない笑顔と共に……。
「一緒に歩きましょう! 渋谷駅まで!」
ニコニコと笑う少女が、そこにいた。
突然起きた、そんなシチュエーションに亮二の思考は一瞬停止していた。