『Synchronize(シンクロナイズ)』 和泉ヒロト
プロローグ
運命とは信じること。
信じることで、間違いなく夢は叶う。
そして。
そう思い込むことで、事実は同調する。
もしも、君に再び出逢わなければ。
もしかしたら、今の現実は違っていたのかもしれない。
本当に、これで良かったのだろうか?
本当に、俺は……。
1
その年、東京の春は早かった。
3月の終わりにしては、汗ばむような陽気の毎日だ。
一雨ごとに春がやってくる。
雨が多い日が続いていたが、そんな言葉のとおりに例年よりも早く桜は満開を迎えていた。
佐久間亮二は、そんな満開の桜を見上げながら考えていた。
この花を、俺はあと何度見ることが出来るのだろう……。
突然の春風が、サァーっと砂埃を舞い上げる。
桜の枝が激しくしなって、花びらが一瞬にしてあたりを桜色に染めた。
思いのほか強い風が止んで、あたりを一瞬の静寂が包む。
亮二は、ひとつため息をついて思い出したようにケータイを開く。
メールの受信ボックスには、少し前に夏子からのメールが届いていた。
件 : 亮ちゃん、逢いたいよ……
そんなタイトルのメールを、亮二は開けないでいた。
夏子の存在は、そのとき亮二の生きる糧になっていた。
亮二にとって、間違いなく……。