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『dolce ex(ドルチェ エスク)』
もうすぐ、雨が降る。
そんな予感を、酷い頭痛と共に感じながら。
ぼくは地下鉄ホームのベンチに、ドスンと腰を下ろす。
ボーっとした頭を抱えて。
ぼくは、ゆっくりと目を閉じた。
周期的にやって来る、重苦しい痛みが。
ぼくを絶望的な気分にする。
そのとき。
ハッと開けた、ぼくの目に。
突然、君の姿が飛び込んだ。
えっ?
どうして……?
でも、ぼくは本当は分かっていたんだ。
それは、きっと。
ただの見間違いなんだって。
幾ら時間が経ったとしても。
ぼくは、絶対に忘れられないんだ。
君のことは、絶対に……。
君との思い出は、突然フッと現れる。
ならば、君との別れが不幸だったとしても。
ぼくは、幸せだった記憶だけを残したい。
君を失ったことが。
間違いなく、今のぼくを作っているから。
だから、ぼくは幸せなんだよ。
きっと。
ずっと……。
『dolce ex(ドルチェ エスク)』
了