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『牛たんと心の痛み』
東京駅の新幹線ホームで、お袋を見送ったぼくは。
独りフラフラと、駅のショップを巡り歩く。
そう言えば、お腹空いたな……。
ぼくはKitchen Streetの牛たん喜助に入って、牛たん定食を注文する。
新幹線で広島まで帰るお袋に、別れる前に弁当とお茶を買って渡した。
たかが、そんなことをお袋はとても嬉しそうに喜んだ。
そんなことを考えながら、運ばれて来た厚みのある牛たんを、ぼくは噛み締める。
ジュワっと溢れ出す肉汁とともに、しっかりとした食感を感じる。
お袋には、いろんな心配を掛けて来た。
離婚によって、初孫を失わせたこと。
再婚によって、大きな二人の子供を養子にしたこと。
そのほかにも、いろいろ……。
ぼくは、親不孝な息子だと思う。
いつまで経っても、親に心配を掛け続けているんだから……。
厚みのある牛たんは、軟らかくてしっかりとした食感を、ぼくの歯に感じさせていた。
それは、まるでぼく自身の舌を噛むような。
そんな、痛みとともに。
『牛たんと心の痛み』
了