49 『また思い出す、君の笑顔』
広尾での打合せを終えた、ぼくは。
恵比寿駅に向かって、なんとなく歩いていた。
こうやって、時間をやり過ごすことが。
今のぼくにとって、ささやかな気休めだったから。
知り合いが亡くなった、というニュースが流れて以来。
ぼくの気分は、すっかり落ち込んでいた。
もちろん、人にはそんな風には見せていなかったけれど……。
そのとき。
目の前のバス停に、偶然赤羽橋行きのバスが停まった。
乗っちゃおう、か……。
そして、ぼくは。
なんとなく、赤羽橋行きのバスに乗ってしまった。
バスが赤羽橋に着く。
少し歩いて、大江戸線の駅前に行くと。
今日は、カップルが駅前の歩道に溢れていた。
そうか……今日は、クリスマスなんだよな……。
ぼくは、目の前にそびえ立つ東京タワーを見上げながら。
なぜか、君の着物姿と笑顔を思い出していた。
君との距離は、まだ。
近いようで、遠い。
本当の君を知りたくて。
ぼくは、いつも君の日記にコメントを書く。
コメントを返してくれる君と。
逢ったときの君との、ギャップに戸惑いながら。
それでも、ぼくは。
本当の君を探し続けている。
君が住む、この街に来てしまったのは。
ただの偶然なんだろうか?
いや。
きっと、ぼくは……。
ふぅ、と一つ息をついて。
ぼくは、また君の笑顔を思い出していた。
ぼくの大好きな。
君の笑顔を、また……。
『また思い出す、君の笑顔』
了
for dear J.