33 『逢えなかった時間の意味』
すっかり色づいた街路樹を見上げながら。
ぼくは、君を待つ。
さっき届いた君のケータイメールが。
少しだけ遅れる、君の到着を知らせていた。
待たせるよりも待つ、こんな時間が。
ぼくは、大好きなんだ。
ふうっと吐く息が白くて。
ぼくは、幸せな気分になる。
君を待ちながら。
ぼくは、君と逢えなかった時間を思い返していた。
その時間の、流れの中で。
きっと、君も。
そして、ぼくも。
確実に変化したに違いない。
それは、もちろん。
きっと、良い方向に……。
目の前に現れた君に。
ぼくは、最初気づけなかった。
それほどに、君は。
凛々しく、スッと立っていたから。
カフェで、君と向かい合って座る。
じっと、ぼくの目を見つめる君は。
とても、幸せそうに見えた。
だけど。
キラキラと輝く君の瞳の奥に。
ぼくは、君の寂しさを少しだけ感じていた。
君の話す言葉や。
君の仕草が愛おしい。
君のことが知りたくて。
だからこそ、ぼくは。
ずっと、君に逢わないようにしていたのに……。
駅に向かう道すがら。
ぼくの掌に感じた、君の手の冷たさを。
ぼくは、きっと忘れないだろう。
君を護りたくて。
でも、本当は。
ぼくを護って欲しいんだと。
湧き上がる、そんな素直な感情を。
ぼくは、笑顔でごまかす。
逢えなかった時間が。
きっと、ぼくたちには必要だったんだって。
楽しそうに微笑む、君の横顔を見つめながら。
ぼくは、そんなことを考えていた。
『逢えなかった時間の意味』
了