32 『還らない時間と後悔』
久しぶりに逢った、君は。
本当に嬉しそうな顔で、ぼくに微笑みかけた。
そんな君の笑顔を見たとき。
ぼくは、確実に心の痛みを感じていた。
「久しぶり!元気だった?」
遠慮がちに。
そんな風に声を掛けた、ぼくに。
君は、少しだけ複雑な顔をして、こう言った。
「うん!たぶん……元気だった、かな……」
ぼくの目を、じっと見つめる君に。
ぼくは、何も言えなかった。
だって、君は……。
「……あなたの心が離れてしまう前に……わたしは、旅立ったの……」
えっ……?
突然の、そんな君の言葉に。
ぼくは、混乱していた。
だって、君は。
ぼくを嫌いになったんじゃ……。
「君を忘れたことなんてなかった……もしも君の心が、あのときのままだったら……」
そんな言葉を、心のなかだけで呟きながら。
ぼくは、無理をして微笑む。
ただ、君の幸せだけを祈りながら。
ぼくは、君の左手薬指に光るリングを見つめる。
ただ過ぎてしまった時間への後悔を募らせながら……。
『還らない時間と後悔』
了