18 『始まり』
開き始めた桜の花を見上げながら、ぼくは君を想う。
薄曇りの空に、今日の桜は少しだけくすんで見えた。
見る場所は違っていても、ぼくと君は同じ季節を過ごしているんだって。
ぼくは、そう思うことで不安な気持ちを振り払おうとしていた。
逢えない君との距離が、ぼくを不安にさせる。
でも……。
そのとき、雲のすきまから明るい光が差した。
そして、ぼくは思えたんだ。
様々な不安を感じるのは。
単にぼくと君、それぞれの心の保ちようだけなのかも知れないって。
嫉妬や不安は、君やぼくの心の中にだけあって。
真っ直ぐに、お互いを見ようとしてさえいれば。
大した問題ではないんだ……。
ぼくは、もう一度桜の花を見上げる。
そのとき。
薄い花びらの色を、輝かせるように。
春の優しい光が、ぼくを包んでいた。
きっと、同じように君のことも……。
『始まり』
了