10 『金木犀のような君へ』
忘れていたはずなのに。
あるキッカケで、思い出してしまう。
それは、まるで鮮烈な金木犀の香りように。
君は、金木犀の香りが好きだった。
そんな君と離れてしまってから。
ぼくは、この時期に香る金木犀の香りを意識して避けて来た。
だけど、いつまでも。
ぼくだって、そうしてる訳にはいかないんだ。
そんな風に、ぼくの気持ちが動いたのは。
単に時間が経ったから、だけじゃなくて。
そう思おう、という風に。
自分の心を動かす勇気を。
きっと、ぼく自身が持てたから。
ふと香る金木犀の香りに。
ぼくは、君のことを思い出す。
だけど、今なら。
ちゃんと、こう思えるんだ。
あぁ、いい香りなんだなって。
微笑みながら……。
『金木犀のような君へ』
了